「ピカピカのぎろちょん」今読んだらビックリの児童文学の傑作
児童文学の傑作「ピカピカのぎろちょん」
佐野美津男さんの本です。
今、読んだら どえらい作品ですよ、これ。
勧められて読んだのですが、ビックリです。
“ある朝起きたら新聞が来ていなくて、
テレビは白い線ばかり映していて、
いつもは車でいっぱいの国道がほとんどがらがら。
鉄道も止まっていて、
広報車が来て、「学校はお休みです」。
そして、国道の向こうの噴水を見に行こうとしたら、
歩道橋にはおまわりさんがいて、「ここは通れません」。…
そのすべてが、「ピロピロ」のせいだというのです。
でも、四年生の「アタイ」と弟の「マア」が、「ピロピロって何」と尋ねても、
ちゃんとした返事はもらえません。
「おとうさんもおかあさんも、
ピロピロは自分たちに関係ないんだと、思いこんでいるようでした。
だからわざと、なんでもわからないようにしていたのです」・・・”
出典 上村令 徳間書店 子どもの本だより
朝起きたら、学校にも行かなくっていい
テレビも映らない
隣町にも行けない
警察が穴が空いたので通路を渡っては行けないと止められる。
新聞も配達されない。
何が起きたか 大人たちもわかっていない。
無線マニアのオジサンが、「どうも ピロピロのせいらしい・・」
と傍受した情報を近所の人に話している。
だけど ピロピロって何?誰もハッキリわからないけど
なんとなくわかったフリをしている。
生活は、食糧も船で入っているらしいので
普通に出来ている。
だけど隣町まで移動出来ない。
ピロピロのせいで封鎖されているらしい。
大人たちはなんとなく わかったふりしているけど
子供たちは好奇心が抑えられない。
なんとしても向こう側がどうなっているのか?知りたい。
とうとう大人の目を盗んで 向こう側を覗くことが出来たが
そこには大きなピカピカに光ったモノがあった。
物知りなメガネ君によると それは“ギロチン”に違いないと。
ほら、ドキドキしてきたでしょう?
しかし、このピロピロの正体は最後までわからないまま物語は終わります。
この作品が出版されたのは1968年。
当時の雰囲気を感じつつ
この物語の最後の方は、町の周囲を黒い高い塀が出来ていき
その周辺を有刺鉄線をグルグル巻いたものが隙間なく置かれています。
大人たちは、とうに慣れて気にしていない様子なのですが
主人公の少女は、いつか その黒い塀の向こう側のものを
皆にハッキリ見せてやろうと決意しているのです。
これは何なんだろう!?と私自身 考えていたところ
そう これは“戒厳令”の状態ではないですか!
子供目線から見た非日常的な世界。
あくまでも子どもですから なんでも遊びにしてしまいます。
ギロチンごっこでキュウリやナスを処刑したり・・・Σ(゚Д゚)
しかし、子どもですから こんなものでしょう。
佐野美津男という人は、いつもすごい児童文学を書く人です。
子どもの頃読んだ「それでもぼくは海を見た」は、私の心に柔らかく刺さった棘は
大人になってからの再読で 氷のように氷解していくような不思議な作品でした。
今回の作品は、この時代読んだことに必然性を感じました。
絶版となっていたのを熱い支持をうけ2005年に復刻されました。
読んでみたい方は図書館でリクエストして見て下さい。
入手出来ない場合は、amazonでも扱っています。